犬
犬のようなドランクの話 R-18
「ねえねえ、スツルム殿〜、僕の活躍どうだった?」
魔物を掃討して真っ直ぐに彼女の傍に向かったその相棒はわざわざ腰を折り、肩が触れそうなほど近く身を寄せて、スツルムから褒美を強請っている。返ってくる普通、との一言にもめげず散々まとわりついて、ついに癇に障ったのか尻を刺されていた。
その光景、昨日も見た気がする。昨日どころか傭兵二人が騎空団の依頼を手伝いに来るたびに判を押すかの如く全く同じ様子である。
「たまにはスツルムも褒めてあげたらいいのに」
戦闘中も一々名前を呼んで熱い視線をちらちら向けていた。いつでもスツルムに構って欲しくて堪らないようである。
それに反して素っ気ない態度のスツルムが褒めなくてもドランクは満足そうではあるが。飼い主がいるだけで喜んで尻尾を振っている犬みたいだ。
「あそこでドランクが魔物を追い込んでくれたおかげで楽だったし活躍してたんじゃない?」
「そうそう、僕のおかげでぱぱっと終わったんだよ〜スツルム殿が倒しやすいように頑張ったんだからぁ〜、ね、ね、僕いい子でしょ〜?」
屈むドランク。期待するように耳が揺れる。スツルムは嫌そうな顔をしていた。
「ドランクって犬っぽいよね、しかも飼い主のために頑張って働く忠犬。ほらほら撫でてあげたら?」
「おまえが撫でればいい」
「飼い主以外は噛まれちゃうよ」
「僕はお行儀がいいからそんなことしないよ〜」
そう言いながらもドランクの眼中にはスツルムしか写っていないのでそっと身を引く。スツルム殿。甘えるような声だ。なんだかお願いを聞きたくなる。
しかし、彼女には通用しないらしく一瞥して踵を返してしまう。それを追いかけていく姿はやっぱり犬にしか見えないなあなんて思った。
忠犬ならこんなことしない。肩口に走る軽い痛みに眉を寄せる。
「あ、ごめんね、スツルム殿、痛かったぁ〜?」
謝罪を口にしながら悪びれる様子はなく、含まされたそれは昂って内臓を押し上げる。
興奮すると歯を立ててくるせいで身体中、噛み跡だらけだ。行儀なんてちっとも良くない。のしかかられて身動きも取れずにいる。そのまま好き勝手に中をかき混ぜられて目の前がちかちかする。
「ん、もうイきそう? 僕も気持ちいいよ、スツルム殿……」
壁は反応して欲しがるように吸い付くが熱を吐き出されたってもう入らない。抜けると同時に溢れた。また蓋をするように押し込まれる。最初言っていた。一回だけ。嘘だ。従順さなんて何処にある。言うことも聞かない駄犬だ。
「っうあ、おまえ、しつこ、い……!」
静止を込めて、残る力で肩を殴っても、ドランクには撫でたくらいでしかなくて、すっかり元通り猛ったそれが奥深くまで突き立てられる。待てすらも出来ない犬は、もう一回だけだからあ、なんて甘えるように鳴いて、噛みつくに等しい口づけが落としてくる。分厚い舌が絡んだ。熱い。息苦しいのに胎の中を弄られながら唇を重ねるのは酩酊するかのようにふわふわとして意識が溶けていく。
唇が離れたかと思えばまた歯が柔い肌に食い込む。痛いはずなのに爪先まで痺れのように快楽が広がって声が溢れる。強まる締めつけに荒い吐息が耳朶を打つ。
「スツルム殿…スツルム殿…」
甘いのは声だけだ。
こうやって組み敷かれて胎内を蹂躙されるのは、獰猛な獣に襲われているようにしか思えなかった。こいつは犬なんて可愛い生き物じゃない。そう、可愛げはないけれど。
何気なく手を伸ばすと耳が揺れた。それは見透かされたようで急速に気恥ずかしくなって、腕を引っ込める。
「……撫でてくれないの」
「……うるさい、さっさとイッて終わらせろ」
腰に両脚を絡みつかせて、軽く動くと呻き声が上がった。
「っ、もお、だめだよ〜そんなことしちゃ」
金色の瞳が近づいて緩む。いつも通りの柔らかい微笑を張り付けているだけでスツルムにはやっぱり牙を潜ませた獣にしか見えなかった。
2022年7月14日