声のはなし

声のはなし

 

声を我慢するスツルム殿の話。※R-18


「っ………、……」
くぐもった声が空間に響いていた。枕に顔を埋めている彼女の顔は見えない。ドランクが背後から穿つたびに掛布が破れそうなほど強くスツルムは握りしめている。角に唇を落として舌を這わせると肩が震えた。連動するようにドランクのを咥え込んでいる箇所が締まってぞくりとした。
「スツルム殿〜、こっちむいてほしいなぁ〜」
耳を甘噛みしながらそう囁くが、首が横に振られるだけである。
 甘い声が恥ずかしいのかいつもスツルムは唇を噛み締める。裂傷ができそうなほど強く歯を立てるものだから、止めないわけにもいかない。声だって聞きたくて、小さな唇に指を口に含ませたのが先日のことである。根が優しい彼女が仕事道具にも等しい指を噛めないのをわかっていたので無理矢理唇へ割り込ませて、責め立てた。
悪態が嬌声に変わり、可愛らしい悲鳴をあげながら何度も達する様を散々愉しんだわけだが、そのせいで今日は枕を離してくれない。背中を唇で撫でたり、首筋に歯を立てると中は反応はしてくれるし気持ちがいいけれど、どんな表情をしているか見たい。
一度、抜いて身を寄せる。
「ねぇ、スツルム殿、知ってる〜?」
身をひねってゆっくりと面を上げたスツルムは、浅い息を繰り返しすこし惚けたようにドランクを見た。
「エルーンの耳ってすっごくよく聞こえるから小さい音もはっきり聞こえるんだよねぇ〜それあんまり意味がないと思うんだけど」
今し方抱きしめている枕を指差しそう言った。
嘘、でもないが本当でもない。確かに聴覚はいいが、枕に吸収されているのだから布で遮られた声が聴こえるだけである。しかし、思考に割く余裕もないスツルムは信じこんでしまったようで真っ赤な頰がさらに染まった。
「……っさっきの、きこえて……」
「うん、可愛い声だよねぇ、スツルム殿の気持ち良さそうな声、だからもうこれ、いらないよね?」
力の緩んだ腕から枕を取り上げて、彼女の手の届かない位置に置く。
漫然と枕を追う彼女の視線を自身で遮って、割り開いた脚に体を滑り込ませる。途中で抜いたそこは未だ濡れていて、再び含ませるのは容易だった。根元まで埋め込むと路がきつく閉まって熱い吐息がこぼれる。
「っ…ドランク…」
少女のような小さな体躯を組み敷くのは少なからず罪悪感がわくのと同時にどうしようもなく高揚してしまう。
そのまま抱き上げて対面の形にさせれば、両眼が大きく開かれる。
「ひっ……!」
膝に上がったせいで深く中を抉ったのだろう。びくりと大きく体をしならせて、飛び出した声を必死に押し殺す。腰を掴んで揺さぶると弱々しく睨まれた。目元を赤く染めて涙目で睨めつけられても余計、欲情するだけなのだがスツルムはいつまでも気づかないしドランクにも教えるつもりはない。
掻き回すように律動を早めるとスツルムは声を抑えたいのか唇が噛みしめられた。動きを緩めてそっと指で唇をなぞる。警戒するような視線に笑って、甘言を吹き込んだ。
「スツルム殿〜、キスしてたら声、聞こえないんじゃないかなあ?」
快楽に溶けている判断ではきっとわからないだろうから。
顔を近づければ縋るように唇を重ねるスツルムに瞳を細める。
口付けをスツルムからしてくれるのはひどく稀なことだ。嬉しくてその気持ちよさにすぐにでも精を吐き出したくなったが、この状況を少しでも長く堪能したくて必死に耐える。舌を差し出すとたどたどしく絡めてくるのが可愛くて、頭を撫でながらゆるゆると突き上げる。口の中に消えていく甘い声に浮かされながら、ドランクは小さな体を抱きしめた。

 


2020年5月14日